日本全国のジャズ喫茶のマスターには悪いと思いつつも、たぶん日本一喫茶店のマスターが似合う役者は寺尾聰でしょうね。
優しい時間や琥珀の寺尾聰は、じつーに良い味を出しています。
優しそうでいて、単に優しいだけでは終わらない奥深さがどこかに宿っている。
ちょっとくたびれた感じの笑顔。
これもまた人生の年齢を感じさせるんですね。
ルビーの指輪や、さらにそれよりもはるか前に出演していた『男はつらいよ』でも、ちょっと青臭く尖っていながらも不器用なムードを醸し出していましたが、年齢とともにトンガリが消えることに反比例して味わいが増してきているように思います。
竹中直人をしなやかにやっつけた月9の『ようこそ我が家へ』でも、良き父親、良き上司を演じていましたね。
そんな寺尾聰が武士の役を演ずると、これまた独特の彼にしか出せない佇まいがある。
そう、黒澤明監督の脚本による『雨あがる』だ。
じつに清々しい映画ではないですか。
寺尾聰を優しく支える良妻を演じる宮崎美子もじつに素晴らしい。
ストーリーは全然違うのだけれども『ショーシャンクの空に』を観た後の清々しさを感じる作品でしたね。
こらは老若男女問わず万人におすすめしたい映画です。

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